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「臨床化学」といえば,どういったものを想像しますでしょうか?
臨床化学とは、日常の臨床の場において、分析技術を土台に据えた化学検査を医療に提供する実務サービスとともに、病因・病態の解明や治療・予防に寄与することを目指しています。 すなわち、臨床化学は学術的な側面から実践的な側面、分析化学から臨床・医学までを広く包括し、これを支える多くの学問領域と接しています。
今回は動物用臨床化学分析装置の開発及び試薬の製造販売を行っている株式会社アイビー(本社:東京都中央区)学術顧問 JCLS認定POCコーディネーター 小林 隆さんにお話を伺いました。
―御社ではどのようなサービス提供,商品開発を行っているのですか?
牛用に特化したポータブルな血液生化学分析システムを開発・商品化しました。
試薬の基本処方はヒト用と変わりませんが、装置の方は農場で使える様な仕様にて今まで農場(On-Farm)で測定できなかった血液生化学検査を可能としております。装置には板金加工を施しておりまして、農場等で測定可能な強度にしております。電源は必要ですが、モバイルバッテリーや車載電源でも測定可能です。
試薬は試薬スライドにガラス濾紙とエッジング膜を組合せた「血漿分離部」に150 μLの全血を滴下し、装置にセットしますと自動的に血漿に分離され、各セルに移送、セル内に塗布されている試薬成分と反応し、比色定量法により最大6項目が約7分で同時測定できます。

―小林さんの臨床化学分析に関わるようになったきっかけ,経緯を教えてください.
私は1980年に栄研化学株式会社に入社後、大阪・東京で臨床検査薬の営業を経験し、1990年より臨床化学の学術担当者として勤務しました。最初の仕事はアポリポ蛋白測定試薬とリホプロテイン(a)測定試薬の開発や市場導入を担当、その後臨床化学全般の仕事に携わるようになりました。
業界の接点という意味では2000年代前半より日本臨床検査薬協会の技術委員会に所属して、日本の臨床化学検査の標準化に関わり、学会活動においては、日本臨床化学会、日本臨床検査自動化学会のPOCT関連委員会のメンバーとしてPOCTの普及活動に尽力いたしました。
―先ほど「牛専用に開発」とお聞きしましたがもう少し産業動物(家畜)の業界のお話お伺いできますか?
皆さんあまりご存じではないかもしれませんが、愛玩動物(e.g. 犬,猫)は自由診療ですが、産業動物(e.g. 牛・馬)は疾病に関しては保険診療(農業共済)になります。
保険診療においては保険適用項目及び点数がヒト同様に設定されています。従って,試薬開発は保険採用項目から開発しました。我々のシステムで最初に注目したのは乳牛でした。
牛の繁殖は人工授精でおこなわれ、生後一年後、最初の人工授精が行われます。そして10ヶ月後に出産し搾乳を開始しますが、その2ヶ月後に再度人工授精が行われています。牛の寿命は約20年と言われていますが、搾乳の為に飼育されている乳牛は3−4回のお産を経て5−6年で屠殺されます。この間殆どが搾乳期間となっているために疾患に罹患し易く、適切な治療と健康管理が必要となります。

ー貴社商品の必要性,価値を教えてください.
ヒトや愛玩動物は医療機関にて治療することが殆どと思います。 しかしながら、牛をはじめとする産業動物の一次診療は現場である農場になります。 これは牛は医療機関に行けないため獣医師による往診になるわけで、検査結果もその場でわかるのがベストです。
今までは一部項目(e.g. 血糖,ケトン体)において電極法の簡易測定装置(ヒトの自己血糖測定装置)で測定されているに過ぎず、その他項目に関しては診療所のラボや検査センターでの測定のため、獣医師が再度農場を訪問する必要があり、検査結果をタイムリーに診療生かすことが出来ませんでした。
そこで我々は血糖、ケトン体、カルシウムを中心として、臓器系・代謝系項目を現場(on-Farm)で検査が可能なシステムを開発しました。 我々の装置はTTAT(Therapeutic turn around time、検査指示から検査結果によって行動するまでの時間)を日単位で短縮しました。
後編に続く
後編「動物用臨床化学分析装置について」
株式会社アイビー https://ib-holdings.com/company/
聞き手 金森産業㈱PlaQuick事業部 泉 規靖